2017年8月27日日曜日

ソーシャルゲームが儲かる仕組み

少し古い記事ですが、基本無料のゲーム(ソシャゲ)の課金ユーザの比率はだいたい1.7%ぐらいだとか。
http://gigazine.net/news/20160325-mobile-market-report-2016/

当然、全てのゲームがそれに当てはまるとは限りませんが。
ただ、概ねこの通りだと仮定すると、MAU(月間アクティブユーザ数)が50万人であれば8500人ぐらいがPUU(課金ユーザ)という計算になります。
更に、PUUの内6割(5100人)ぐらいが微課金勢でそれらは売上的には些細なものだから、実質残り4割(3400人)ぐらいがメインの収益ソース、更に売上の半分を支える重課金勢の割合は、PUUの内1割(950人)ほどとか。
一人の課金ユーザが支える無課金ユーザ数は57.82人ぐらいという計算になるのですが、これは・・・。例えば、財務省によると、2025年には年金受給者1人を支える現役世代は2.2人になるとのこと(参考)ですが、ソシャゲと比べれば大分ヌルく見えてしまう程度に歪な収益構造だと思います。

こんなんで儲かっているの?
と思いきや、関連企業の決算情報を見てみると中々儲かっている様子。

■mixi (2017年3月決算)
・売上: 207,161百万円 (前年比: -0.8%)
・営業利益: 89,008百万円 (前年比: -6.3%)
・営業利益率: 約43%
メディアプラットフォーム事業(SNSなど)の分の決算も混ざっていますが、売上30億程なので誤差みたいなものだからそのまま混ぜておきました。(元々の本業はそっち系だとは思うので念のため)
■ガンホー (2016年12月決算)
・売上: 112,475百万円 (前年比: -27.1%)
・営業利益: 46,081百万円 (前年比: -36.4%)
・営業利益率: 約41%

■コロプラ (2016年9月決算)
・売上: 84,730百万円
・営業利益: 31,855百万円
・営業利益率: 約37.6%

■CyberAgent (2016年9月決算の内ゲーム事業の連結分)
・売上: 122,638百万円
・営業利益: 30,451百万円
・営業利益率: 約24.8%
調べた4社の中では営業利益でビリ。売上的にはガンホーを追い越していますが、他と比べると営業利益率が低いのが特徴。他と比べて明らかに運営にコストが掛け過ぎじゃね?という印象はあるので特に不思議ではないですが。あとは、広告会社だからプロモとかに相当金を使っているとか?(インターネット広告事業も結構堅調とからしいのですが、その売上の内自社広が占める割合がどの程度なのか調べたかったがよく分からなかった)
全般的に営業利益率が高い。
caが若干低めですが、それでも他業種と比べると大分高い。
例えば製造業の営業利益率はだいたい5%ぐらいが平均的。(参考
初期投資がメチャクチャ掛かるけどヒットするのはほんの一握りのため、大半のものはリクープ(費用回収)すらままならず死ぬにも関わらず、新作がリリースされ続けるのも頷ける。

どうしてそんなに儲かるのか。

2012年ごろコンプガチャ が問題になって、最後には消費者庁が違法(景品表示法)だと勧告して業界内で自主規制する騒ぎにまでなりました(騒動のキッカケ?)。要するに、阿漕なやり方で消費者からジャブジャブとお金を吸い取っているから儲かっているのか?

当時は、コンプガチャの違法性云々や、射幸心(可能性の低い偶然性を得ようとする欲求)を煽り云々が争点になっていたような気がしますが、そこは実のところ大した問題では無かったように思っています。
もちろん、未成年者が親の金を遣ってジャブジャブ課金とかだったとしたら大問題ですが、事理弁識能力がある人が自分で稼いだ金を自分の意思で遣う分にはという意味で。
というのも、人間が持つ欲求の内、射幸心なんて取るに足らないものなので、それだけでここまで儲かる筈が無かろうと。ただし、ここから先は実際に経験してみないと分からないので、去年ぐらいから実際にソシャゲで無制限に課金できるようにして実際に体験してみたのですが、それで何となく理解することができました。

アメリカの心理学者、アブラハム・マズロー(の自己実現理論)によると人間には5段階の欲求があり、自己実現(これが5段階目)に向かって絶えず成長する生きものであるとしています。

(欲求の5階層)
1. 生理的欲求: 生きていくために必要なもの(食欲、性欲、睡眠欲)
2. 安全欲求: 病気や怪我のリスクを回避したり経済的安定を求めたいとする欲求
3. 社会的欲求: 友達や仲間が欲しい, ぼっちになりたくない
4. 承認欲求: 友達や仲間から認められたい, 出生したい, 偉くなりたい
5. 自己実現欲求: 創造的な活動がしたい

ソシャゲ(ソーシャル=社会性)というコンテンツは、言わば閉じられた一つの社会で、その中で承認欲求を満たそうとして人は課金をします。ただし、所詮はゲームコンテンツの中の社会なので、その中ではどう足掻いても自己実現欲求を満たすことはできません。逆に言えば、自己実現をする必要が無い箱庭です。つまり、自己実現はしなくても良くて、承認欲求さえ満たせば良い構造だからこそ、(極一部の人が)そこに無尽蔵なまでの投資ができてしまう。これがソシャゲが儲かるロジックなのだと理解。
このロジックと割とよく似ているのが受験戦争ですかね。受験戦争の最大の問題点は結果的にそれが自己実現欲求の満足という観点を置き去りにしていた(良い大学に入る、良い企業に入ること=承認欲求の満足がゴール目標になっていた)ことで、その反省(というか、結果的に国益にならなかった?)から生まれたのが「ゆとり教育」なる考え方だったと思うのですが、何れにしても両極端だなと思います。
それを軸にした戦術として、スタミナ(時間制限を拡張することでアバターを成長させる機会を増やせる仕組み)、ガチャ(アバターを強化する装備アイテムなどを購入できる仕組み)などがある訳です。
逆に言えば、「承認欲求の満足」に紐付かないものは失敗します。その失敗例として思いつくものといえばデレステのドレスショップです。ドレスを変更することでアイドルの総合力が上がるとかそういう要素が一切無かった(仮にあっても課金必須という時点で9割強のユーザからは批判を買う。極めて低い確率であっても無課金ユーザが入手できる方法を用意しておく必要がある...結局ガチャ)ので結果的に全然売れず、最終的にはガチャチケットと抱き合わせ販売する形に落ち着きました。
ちなみに、課金上限は特に設けずに試していたのですが、約1年間での月当たりの課金額はだいたい1万円といったところでした。(ソシャゲという箱庭では狭すぎるので暇つぶしにはなるけど満足は出来ないという感じでした)

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