2017年10月22日日曜日

スマホ時代の商業動画コンテンツ配信サービスについての簡単な考察

上図はNetflixのAppStore(アメリカ)での過去1年間のセールスランキング推移です。
もちろんガチャとかは一切無く、アプリ上での課金手段はサブスクリプション(定額課金)のみ。ガチャゲー一色の日本のセルランと違って、米国のセルラン上位はNetflix、Spotify、YouTubeなどのストリーミング配信系サービス(全てサブスクリプションの筈)が過半数を占めていて、ゲーム系ではクラクラ、キャンクラ、ポケモンとかぐらいでそれ程多くはありません。ちなみに、ストリーミング配信系以外の非ゲームだとTinder(出会い系)とかが強い。

Netflix補足:
・米国のオンラインDVDレンタル、ストリーミング配信会社
・1997年創業、1998年にウェブ上でのDVDレンタルサービスを開始
・2007年以降VODストリーミング配信を開始
・2002年からNASDAQに公開しているが2013年以降に急成長

株価の成長具合から見て、正にスマホ時代に当たった商業動画コンテンツ配信サービスって感じでしょうか。

日本ではいまいちパッとしませんが。

Netflixの日本のAppStore上でのセールスランキングは100位付近。日本の同業種の他サービスとしては、dTV、RakutenTV、USENなどがありますが、どれもパッとしない印象。海外のその他サービスとしては、Amazonプライムビデオ、Huluなどがあり、Amazonプライムビデオはそこそこ好評ですが、Huluに関してはdTVやRakutenTVと同程度といった感じ。

Amazonプライムビデオは「prime会員になっていれば棚ぼた的に無料で動画が見れる」ことが好調の要因なので、Netflixのような「商業動画コンテンツ配信サービスとしての成功」と同列で考えるのは違和感があります。

Amazonプライムビデオ以外で日本でヒットしている同業種としては、少し毛色が違いますがAbemaTVとかでしょうか。(なお、YouTubeやニコニコ動画といった主にUGCを扱っているものは除外してます)

AbemaTVのAppStore上でのランキングは200位ぐらい。主に広告で収益化しようとしているようですが、有料会員登録するとVODで見れるようになるので、AppStore上のランキング=Netflixと純粋に同一形態と見做せるかもしれません。Netflixと違って国内向けのコンテンツ調達は十分できているであろうにも関わらず、Netflixにすら勝てていないところが中々興味深い。

単純に品揃えが原因では無いことは確かなようです。
そもそも品揃えさえ良ければ客が付くのであればdTVあたりがもっとヒットしている筈

以下、推測ですが、
米国は国土が広い関係で電波を隈なく配信することが(最初期の頃は)技術的に困難だったためケーブルテレビ中心に発達してきた一方、国土が狭い日本ではインフラ的な事情を割と簡単にクリアできたので、早期から電波放送中心に発達し、その結果米国では「多様なチャンネルの中から好みのチャンネルを買う文化」みたいなものが定着し、方や日本では(電波配信の性質上、垂れ流し状態にせざるを得ないので)「CM付きのコンテンツを無料で見る文化」が定着したと考えることができます。

参考資料:海外におけるケーブルテレビ市場の動向(総務省)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/chousa/2010cabletv/pdf/060421_2_3.pdf
2005年末時点の米国でのケーブルテレビ世帯加入率は84.6%で, 減少傾向ではあるが平成18年時点でも約69%程度とのこと。
参考までに、日本でのケーブルテレビの世帯普及率は実は(全く実感が無いのですが)そこそこ高いのですが、第三セクターが介入していたりするものが含まれているらしく、普通の(多チャンネル放送の受信に対応した)ケーブルテレビの普及率に絞ってみると1千万世帯に届いていない程度のようです。
もちろん、これは最初期の頃の話しで、今の米国には当然ですが地上波放送もあってアンテナさえ買えば無料で商業動画コンテンツを見ることができますが、それでもケーブルテレビの人気には根強いものがあります。

黎明期〜普及期に掛けてヒットすると、それに関わる強力な利権構造(日本なら電通とか)が同時に生まれることで、普及期以降に新たな方式を採り入れようとしても市場から排除される「三つ子の魂は百までメカニズム」と呼ばれる(※私が勝手に呼んでいる)市場原理が生まれます。これが(やや端折りますが)、サブスクリプション方式では商業動画コンテンツ配信サービスとして日本で成功出来ない原因の根本であろうと推測しています。

AbemaTVの広告モデルで何とかしようとする手法は、この推測が正しければ正攻法かもしれません。なので、長い目で見れば上手くいくんじゃないかと思っています。
ただし、仮に上手くいったとしてもせいぜいテレビCMと同程度のコンバージョンしかない(※テレビCMは、母数がメチャクチャ多いからコンバージョン率が低くてもそれなりにペイできるものだと思っている)となると、仮に私が広告を出す側の人間だったら「それならテレビでええやん」と思ってしまいそうな気がする。インプレッション等の数字が正確に分かるようになる筈なので、金を払って広告出稿する側からすると曖昧な「テレビの視聴率」よりもシビアな判断を下しやすいことがメリットといえばメリットかもしれませんが、それってプラットフォーム側からするとリスクでしかないかも。(AdSenceみたいにコンバージョン率が高いとかなら話しは別ですが、既存のテレビをインターネットに持ってきただけではその点はあまり期待できないと思っている)

2017年10月15日日曜日

スマホ音ゲーの傾向

ガルパ、ミリシタ、歌マクロス、うたプリ、SideM、その他諸々。2015年末〜2016年にかけてデレステが好セールスを叩き出した影響か、今年はスマホ音ゲーの新作が続々と登場していますが、セールス的には、
・相変わらず強いデレステ
・地味にしぶといスクフェス
が「二強」といった感じで、新規は中々苦戦しているようです。
以下、各アプリ(iOS版)のセールスランキング(全アプリ総合)の推移を見ていきます。(ランキング推移はAppAnnieで確認)

(デレステ)

・強い
・今年に入ってから下降トレンドになったものの7月ぐらいから徐々に上昇トレンドに転じている
・ガルパ合わせでスライドを導入し、ミリシタ合わせでガチャ率を1.5%→3%に緩め、SideM合わせでスマートモード追加など、着実に新規を潰していく施策を実施できていることに加え、2周年記念で5日間10連ガシャを毎日1回無料といった大盤振る舞いな施策が功を奏した形か
・出戻り勢が多そう(私もその一人)

(スクフェス)

・地味に強い
・100位を割り込んだ時期もあったものの、そのまま落ちることなくそこそこの順位を保つ
・下降トレンドであることには変わりないが「底の強さ」みたいなものが感じられる

以下、これら2強に仕掛けた新規勢を見ていきます。

(ガルパ)

・概ね好調(反発ライン=100位前後)
・ただし、上位キープは出来ていない(新規ガチャ実装→そこそこ上位へ上がる→すぐに落ちている→新規ガチャ実装...の繰り返しで、それは他のゲームでも同じだが、デレステと比べて上位定着期間が短い)
・楽曲コンテンツの追加ペースが早いものの、中長期を見通した運営プランができていないのか、追加コンテンツとイベントが上手く連動出来ていなかったり等の運営面での舵取りの甘さが目立つ
・このゲームの差別化要素は、他音ゲーと比べてゲーマー向けに寄せている点で、それが(アニメが成功しなかったにも関わらず)ヒットできた要因だと思われるが、その半面、この路線だと新規顧客獲得に苦戦することになる(ゲーマー向けに寄せれば寄せる程、かつての格闘ゲームやSTGなどと同様のタコツボ化状態になるので新規から敬遠されるようになる)
・実際、新規流入が8月にドカッと入っている(OVAの地上波+AbemaTVでのOA or ブーストだと考えられる)が、その後セールス的には9月初旬に過去最低を記録していることから、新規顧客の定着化に難がある事が数値的にも浮き彫りになった

(ミリシタ)

・軟調(反発ライン=200位前後)
※図で見ると分かり難いですがガルパの概ね2倍下振れしています
・事前登録100万超えなど、リリース前の話題性はあった
・レビューを見る限り、コンテンツ追加ペースが遅く、イベントも盛り上がりに欠けていたことに加え、ゲーム本編が特に新規性が無かった事がユーザの不満を買った模様
・楽曲実装の遅さは、コンテンツ調達コストが相当重い事が要因か
・このゲームの最大の弱みは、デレステと比較した場合の差別化要素がキャラクタ(IP)しか無い点かもしれない

(歌マクロス)

・不調(200位圏外が安定しつつある)
・テコ入れが必要だと思われるが、ミリシタと同様コンテンツの調達コストが結構重そう(=楽曲コンテンツ数では勝負できない筈)だから、打開策としてはレアリティの投げ売りぐらいだと思われる
・このゲームで強くなるには、最高レアリティが9種必要で、しかも最高レアリティは最低でも同じカードが2枚無いとレベルMAXにならず、更に属性染めアリという具合
・考え得る限りの搾取ロジックが実装されており、その辺が課金慣れしたユーザから敬遠された(かどうかは分からないですが、少なくとも私はそこそこ遊んだものの1円たりと課金する気が起きず、完全無課金プレイでした)

(うたプリ)

・弱い(リリース初日10位以内に入れず)
・そもそも音ゲープレイヤーなんて8割は男なのに、何故女性向けコンテンツで作ろうと思ったのか(開拓を狙うにしても、中身がスクフェスと同じ=無策同然なので、それでは開拓なんて出来る訳もなく)

(SideM)

・弱い(リリース5日で100位以下へ落ち、2週間で150位を割り込む)
・そもそも音ゲープレイヤーなんて8割は男なのに(略)
・シングルレーンでゲーム性は完全に捨ててきているスタイルは、ある意味斬新かもしれないが、それならそもそも音ゲーにする必要が無いのでは...(パズルゲームなどの女性ウケの良い別ジャンルで攻めた方がまだマシだったのではないだろうか)
・音ゲーで女性向けマーケット開拓という牙城に無策で挑んだうたプリよりはマシかもしれないと思いきや、うたプリよりもセールス的には弱い(やっぱり、女性向けでもゲー無ではダメみたいですね)

〜〜〜〜〜

総括してみると、
(1) デレステより後の世代でのヒットの傾向としては、高難度化が好まれる傾向
 - 新規勢で唯一ヒットできたガルパだけがこの路線
 - 定着するユーザは(スクフェス/デレステ等の)経験者ばかりだと考えられる
 - つまり、順調にタコツボ化が進んでいる
(2) セールスを上げるのには蛸壺の住人が必要(特徴は下記)
 - 新奇性が無いと寄り付かない
 - IPではなくゲーム性を重視
 - 文脈を踏まえたものを提供しなければ叩かれる
 - ↑は、新規プレイヤから敬遠される要因にもなる
(3) IPは初期流入やメディアミックスしたタイミングで効果はあるが、継続率向上や転化行動の発生などには寄与しない(人気キャラクタ持ってくれば勝てる訳ではない)
(4) 課金慣れしているユーザは、搾取に対する警戒も強い
(5) 3D導入のインパクトはもう無い (コスト的に不利になるだけ)
(6) 女性向け市場拡大は(STGや格ゲーと同様に)性質上困難
という感じでしょうか。

正直なところ、ガチャゲーにうんざりしつつある。

合理的ではないものを作りたい

ここ最近、実機版の東方VGSの開発が忙しくて、東方VGSの曲追加が滞っています。 東方VGS(実機版)のデザインを作りながら検討中。基本レトロUIベースですがシークバーはモダンに倣おうかな…とか pic.twitter.com/YOYprlDsYD — SUZUKI PLAN (...